今の会社を辞めたら生きていけなくなるのか?会社員なら知っておきたい労働者を守るセーフティネットについて
はじめに
前の記事に引き続き、ゴールデンウィーク明けからも読者の皆様が希望を持って生きていけるような記事を綴っていきたいと思います。本日は「今の会社を辞めたら生きていけなくなるのではないか」という不安に対するアンサーとして「そんなこともないよ」とお伝えすべく、制度の面からまとめてみました。ぜひご一読ください。
労働者はリスクと隣合わせ。セーフティネットの存在を知っておこう
結論から申し上げると、私の意見としては、仕事は元来、自らの人的資本をリスクに晒して対価を得る仕組みであることに注意された方が良いと思います。わかりやすい例では、営業職であれば顧客と会話して契約を成立させる使命がありますが、その過程は一筋縄で行くことばかりではないはずです。時には顧客に無理を言われたり、時にはノルマに追われてプレッシャーに苛まれたり、どこかで心がポキっと行きそうなタイミングを誰もが経験したことがあると思います。仮に組織内でも、一生懸命に何かを成そうとすれば衝突は起こりますし、部署移動や転勤など会社の一存で全く新しい環境で新しいことに取り組むことだってあるでしょう。働くことはそういうリスクと一緒に並走していくことでもあります。
さて、そんなリスクをバックアップする制度(セーフティネットと呼びます)が何もない状態では誰も安心して働けないため、この日本国はちゃんとそこのところも考えてくれています。昨今は、「困ったら生活保護」という声を耳にする機会が増えたように思いますが、実際には生活保護制度はセーフティネットの一部であって、他に何重にも制度が用意されています。
この記事を読んでいる時点ですでに限界を迎えている方もいらっしゃるかもしれませんが、まだ余裕がある方におかれましては元気なうちに各種制度を理解しておくことで、いざという時の身の振り方をリアルにシミュレーションすることができますし、それが安心を生むと思います。その安心を持って、今の仕事で少し挑戦的な活動をしてみたり、より自分のパフォーマンスを発揮できる職場を探したりといった行動に繋げていただければと思います。
労働者を守るセーフティネット
地方自治体や会社によって制度や福利厚生の差があることと思いますが、ここでは基本的なものを取り上げていきたいと思います。仕事という観点から、仕事を休む、仕事を辞める、仕事ができない状態になるという三つの状態に対応したセーフティネットは何があるのかをざっくりまとめていきます。
仕事を休むときのセーフティネット
いわゆる休職に際するセーフティネットを三つ紹介します。公的なものとして提供される労災保険と傷病手当、会社の福利厚生として提供される休職手当です(休職手当はない場合あり)。制度の概要はそれぞれ以下の通りです。
- 労災保険:業務中や通勤中に起きた怪我や病気、死亡などについて労働者とその家族を救済制度
- 会社か労働者が労働基準監督署に申請(お金は会社が負担)
- 支給期間が決まっているわけではなく、療養が必要で就労不能である限り支給
- 給付基礎日額の約80%と治療費
- 傷病手当:業務外の病気や怪我により仕事を休み給料が出ない場合の救済制度
- 協会けんぽや起業の健康保険組合に申請
- 最長1年6ヶ月
- 標準報酬日額の2/3程度
- 休職手当:勤続年数や診断など基準はまちまちで企業が定めた基準に基づく救済制度
- 企業の就業規則に基づいて申請(会社の人事に問い合わせれば良い)
- 半年~1年程度(企業による)
- 標準報酬月額の6~8割程度(企業による)
まずは、どうしても大変なことになったら会社を休んでもしばらくは路頭に迷う可能性は低いということだけでも覚えておいてください。
仕事を辞めるときのセーフティネット
仕事を辞めてから、次の仕事を探すための生活を支援してくれる制度として失業保険があります。「保険なんて入ってないぞ」と思われるかもしれませんが、毎月、皆様のお給料から差し引かれる雇用保険料で賄われているものです。
この失業保険は退職の原因が退職者と会社のどちらに起因するのかに応じて2パターンあり、受給開始期間などに差異が生じます(退職者本人に起因する自己都合、会社に起因する会社都合があります)。それぞれの概要は以下の通りです。簡単にいうと自己都合より会社都合の退職の方が支援が手厚いです。少し話が外れますが、会社都合なのに会社の圧力に負けて自己都合扱いにされないように気をつけましょう。
- 会社都合の場合(例えばリストラ、ハラスメント、サービス残業の状態化等不当な労働条件によるものなど)
- 90〜330日間支給
- 7日で支給開始
- 自己都合の場合(例えば育児、転職や起業、懲戒処分など)
- 90〜150日間支給
- 7日+2ヶ月で支給開始
いずれの場合もハローワークで求職の申し込みを行い、就職活動中という状態であることを登録し、そこから一定期間経つと限度の期間まで支給が開始される流れになります。ハローワークで紹介される求人から選択をしないといけないわけではなく、民間の転職エージェント経由での就職活動も可能です。定期的にハローワークに活動報告を行うことで継続して手当を受け取ることができます。
自己都合の退職についてもきちんと生活を保証してくれる日本は本当に素晴らしい国だと思います。また、失業保険の他にも求職中に家賃を補助してくれる住宅確保給付金や地方自治体によっては就業のトレーニング制度もあったりするので、調べてみることをお勧めします。
何にせよ、この国には仕事を辞めざるをえなかったり、個人の志向に合わせてチャレンジをするための基盤が整っているということを知っておきたいです。
仕事ができない状態になった時のセーフティネット
ここで初めて生活保護が出てきます。生活保護は「最後の砦」と言われるように、一時的な休業や失業ではなく、働くことができず生活に困窮した人を援助する制度です。受給するための要件が厳しいことが特徴で、例えば、受給の条件として車や預貯金などの資産がないことや親族からの援助が受けられないことなどがあります。
ここまでさまざまなセーフティネットを紹介してきましたが、こうしてみると、この生活保護制度の他にもさまざまな境遇の人に向けた制度が存在することを認識できます。
知っているだけで心が軽くなり行動が変わる
今回は仕事に関するセーフティネットについて解説しました。細かいことは忘れてしまっても大丈夫で、仕事を辞めてもすぐさま路頭に迷うことはなさそうだと感じていただけたなら幸いです。
確かに我々は自転車でいうと補助輪を外されているかもしれないですが、足が限界なら止まって足を休めることができるますし、違う自転車に乗り換えることもできます。肝心なのは個々人がそのことを理解することで、時には少し難しいコースを走ろうと思えたり、何なら車を発明しようと思えることです(わかりやすくしようとしてわかりにくくなっている気もする)。
本日は仕事に関するセーフティネットが主題だったため今日は紹介しませんでしたが、再就職手当や小規模事業者持続化補助金、創業支援融資制度など、起業を応援するような制度や、入院や手術などで一月に医療にかかるお金が大きな金額になった時、患者が支払う金額が一定になる高額療養費制度など、色々なセーフティネットがあります。
これらの制度を整えてくれた先人たちの気持ちを慮りながら、勇気を持ってキャリアを歩んでいきましょう。
「この記事を読んで会社を辞めようと思ったけど、辞めて大丈夫なのかな?」と言った不安に関してはこちらの記事をご覧ください。それでは!!
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