投票へ行かない人を責めるVTRが苦手すぎる
「若者の政治離れ」が叫ばれますが、多くのメディアでは政治経済の話は中学校で習うような内容をすっ飛ばして始まってしまうことが多い印象で、いきなり減税や社会保障などの具体的な議論が展開されているように思えます。
若者が政治に失望して敵意剥き出しで政治を見捨たというよりは、そもそも何が起こっているのかわからないまま投票日が来ていると言うような、「離れる」どころか、まだ「入り込んでいない」というのが本当のところではないでしょうか。
今は18歳から選挙権がありますが、例えば大学生で会社から給料をもらったときにごっそり天引きされて萎えた経験がまだない方は、いきなり社会保障の財源などの話から始められても、ついていけないのは当然だと思います。
しかし、そんな方々が社会人になる頃に、今の決定が良くも悪くも影響するという現実があり、人口動態の都合上、そう言った現役世代の方々が割を食うことがほとんどです。私はこの構造に不平等さを感じます。
そこで今回は、議席数や任期といった中学校で習う内容を中心に、参院選そのものに関する情報をまとめてみました。
そもそも参議院議員は何人いて、今回の選挙で何人を選ぶのか
結論、参議院議員は原則248名で、2025年7月20日の投票で選ばれるのはその半数の124名です。参議院議員の任期は6年間であり、もう半数が3年ずれて選挙で選ばれていますので、我々からすると3年ごとに参議院議員選挙の案内をもらうと言うことになります。
今回の選挙で選ばれた人たちは6年間、参議院議員として働きます(つまり、2031年の7月までが任期です)。今から3年前には、もう半数のグループの参議院議員が選挙で選ばれており、また3年が経って2028年の7月になると、その人たちの任期が終わり、参議院選挙が行われるという周期で議員の入れ替えを繰り返します(図1)。
国民の声をより反映できるとされる衆議院とは対照的に、参議院には途中の解散が無いうえ、6年間というとても長い期間で執務を行う人を決めることになります。今年の4月に小学校に入った子どもさんがいたら、今回選んだ議員の任期が終わるころには、中学校に入って慣れてきたかな、、というくらいの時間感覚です。
図1: 参議院議員の任期
2025年7月に青グループ124名を決める選挙が行われて(図上段)、当選した議員は2031年7月までが任期となります。もう半分の赤グループ124名は2022年7月から参議院議員の任期がはじまっているので、2028年7月に任期終了となり空いた124枠を争って選挙が行われる予定です(図下段)。
現状の議席内訳と与党の過半数割れについて
現状、参議院の議席は自由民主党(自民党)と公明党の連立与党で過半数を占める状態です。具体的には248議席のうち140議席を占めており、これは約56%の割合です。
今回、その半分の議員の任期が終わり、上記の現与党がまた過半数を獲得できるかどうかが注目されています。与党を担う自民+公明党は75名を、野党と無所属は48名を残して新たに124名(今回は+1名欠員の補充者)が決まる選挙となります(図2)。自民党+公明にとっては、現職の75議席に加えて、選挙で50議席を獲得できるかどうかが、過半数(125議席)維持の基準となります。
議席過半数が一つのターニングポイントとなる理由は、国会で予算案や法律案を可決するにあたっては、基本的な考えが同じグループ、つまり同じ政党で過半数を占められた方が多数決上の都合がよく、スムーズに物事を進めることができるからです。ここについては、前回の記事で詳しく解説しています。
図2: 参議院選挙議席見取り図
前回の参院選で選ばれたグループは任期が続き、前々回(6年前)の参院選で選ばれたグループが任期を終えて空いた125席を奪い合う(1名分は前回の選挙で選ばれた議員の中で欠員が出た分)。空席のうち、自民と公明党合わせて50議席を獲得できれば過半数となる(図の半数ラインを超える)。
衆議院議員選挙とはちょっと違う!複数人区や比例代表制
この項では参院選における議員の選び方について解説します。有権者が候補者や政党に投票することには変わりないのですが、衆院選と異なる点が何点かあります。
衆議院議員選挙では、小選挙区制と比例代表制の二つの方法で選挙が行われました(小選挙区比例代表制)。
- 小選挙区制:日本を289個の小さな選挙区に分けてその中で一人の当選者を決める方法
- 比例代表制:有権者が政党名を書いて投票し、得票数に応じて政党ごとに議席が割り当てられ、各政党は用意していた優先度付きの候補者リストの上から順に当選者を出す方法
参議院議員選挙でも選挙区選挙もあり、比例代表選挙もあるのですが、上記の小選挙区比例代表制とは少し異なる制度になっています。それぞれで原則、74名と50名が決まります。
- 選挙区の分け方は原則47都道府県ごとで、議席数は一区あたり複数の場合あり
- その区から一人しか当選しない場合は「一人区」と呼ばれる
- その区から複数人当選する場合は「複数人区」と呼ばれる
- 比例代表選挙では候補者リストにあらかじめ優先度がついておらず、候補者ごとの得票数で政党内の当選順位が決まる(つまり、比例代表に候補者名を書いてもOK。もちろん政党名だけ書いてもOK)
衆議院選挙の小選挙区制や、参議院選の一人区については、当選者以外へ投票した人の意向が反映されない一方で、比例代表や複数人区では複数の政党が当選する素地があります。
土台があってはじめて個別の議論を評価できる
自民党がダントツで強かった時代とは打って変わって、過半数割れを起こすかもしれないという中では野党にとっては大チャンスであり、実際、さまざまな新しい政党が出てきました。
その分、色々な考え方、主張が出てきて各内容については難しい部分も含まれますが、まずは選挙制度や公職選挙法などのルール、さらには民主主義のメリデメの議論から行う場があってこそ正しい選択ができるのではないかと思います。
民主主義は主権者たる国民に全ての責任がある前提の考え方です。例えば、冒頭申し上げた通り今の決定が6年後にも影響するわけであって、途中で間違った人を選んだことに気づいたとしても、その人を罷免したりはできません。今回述べたような制度を十分に鑑みたうえで、一人ひとりが責任感を持って投票を行うことが重要かと思います。
投票日まで残り10日です。引き続きよろしくお願いいたします。
※本記事は制度や政策に関する個人的な考察を主としたものであり、特定の候補者や政党への投票を呼びかけるものではありません。
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